厩戸先生

  • 2018.01.07 Sunday
  • 20:58

みなはその人を厩戸先生と呼ぶ。

 

第1土曜日、先生はカウンターの端で競馬新聞を広げる。

決して広くはないその店でははっきりいって迷惑な気もするが誰もは何も言わない。

先生が新聞を閉じる。主が小鉢と徳利を差し出す。

二人が何度も繰り返したであろうその動作には全く無駄がない。

「当たるといいですね」常連が声を掛ける。

「自信はあるんですよ。いつもね」先生はほほ笑む

 

第2土曜日、先生はカウンターで酒を飲む。

徳利の数が先週の勝ち具合を教えてくれる。

徳利が3本ということは良い具合に勝つことができたのだろう。

「諭吉が20人に増えました。ベストな結果でした」

先生曰く、最も合理的な買い方はワイド1点1万円だそうだ。

競馬を知らない僕には何のことかはわからないが。

先生は年金生活でも楽しんでいるようにみえる。

「リタイアした人間は収入がありません、そこで目を付けたのが競馬です」

「経験を積むと予想の精度は上がるものです。あれこれ考えるのは頭の体操にもなりますしね」

 

第3土曜日、先生は酒は飲まない。

「本当に時代は変わった。私が君と同じ歳の頃は国が活気に満ちていた。働けば働くほど給料も増えた。

何も考えずに動くだけだから不安も感じなかった」

「それが今では安い給料のまま、仕事量だけが増えている。

私のような生活をしている者がいうことでもないが、楽しいかね、今の仕事は?」

先生が手に入れた20枚の紙を僕は一月働いても手に入れることができない。

「先生、競馬教えてください」

「競馬は哲学ですよ。やるなら自分でやりなさい」

 

第4土曜日、先生は翌週の日曜日に思いを馳せる。

「来月も楽しく生き長らえたいものです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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